ふたむら内科クリニック

機能性ディスペプシアについて🍒

- “患者様に寄り添う医療” ということ -

私のクリニックでは、毎日のように胃内視鏡検査を受ける患者様がやって来られます。症状は、胃のあたりの痛み(心窩部痛)であったり、食後の胃もたれであったり、食べはじめてすぐに満腹感がきてしまうであったり、むかつき(悪心)、吐き気、嘔吐など様々です。

私が胃内視鏡検査の手習いを始めた30数年前は、その日の10数件ほどの検査に必ず2~3名かそれ以上の、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者様がおられましたが、ヘリコバクターピロリ除菌が普及したり、生活習慣が変容したせいか、最近は胃十二指腸潰瘍の患者様は確実に減少しています。また、胃がんや食道がんも、当院のようなクリニックではそんなに頻繁にみつかることはありません。

「本当に胃が痛いのに、なんでもないなんて…」

実は、胃内視鏡検査をしても、胃の痛みをはじめとする諸症状を説明できるような病気が診断されないことの方がはるかに多いのが事実です。
件の30数年前なら、内科診察室では、胃内視鏡検査を受けた患者様に対して、

医師
「○○さん、先日の胃カメラ、とくになんでもなかったよ、良かったね。」
患者様
「でも先生、やっぱり胃が痛いんです。」
医師
「胃カメラでなんでもないんだから大丈夫だよ、もう来なくていいよ。」
患者様
「でも先生・・・」
医師
「お大事に、はい次の方どうぞ!」
患者様
(悲しそうな顔で、立ち去る患者様の後ろ姿・・・)

こんな光景が、きっと日常的にあったんだと思います。

このように、胃内視鏡検査や、超音波検査・CT、採血検査など、詳細な検査をしても、症状を説明しうるような疾患がみつからないのに、最初に書いたような、心窩部痛・胸やけ・胃もたれ・食欲不振・悪心・嘔気などの諸症状に悩む患者様を、「機能性ディスペプシア」という概念でみてゆこうということになりました。

機能性ディスペプシア

RomeⅡとか、RomeⅢという診断基準(イタリアのローマに専門家が集まって決めたようです)では、機能性ディスペプシアの定義がなされたり、「潰瘍症状型」「運動不全型」「特定不能型」(RomeⅡ)、「食後愁訴症候群」「心窩部痛症候群」(RomeⅢ)というような分類がされています。詳しいことを知りたい方は、Web検索していただければ、いろんな情報があります。

まあ、難しいことはさておいて、色々検査してもさしたる異常がみつからないのに、患者様は、心窩部痛をはじめとする様々な症状に悩んでる、そのことをきちんとみてゆこうよ、というのが「機能性ディスペプシア」ということだと思います。

「機能性ディスペプシア」の背景には、様々なストレス、特に心理的なストレス要因のかかわる比重が大きいとされます。ストレス要因が解決すれば、症状の改善に結びつきやすいのですが、それはそう簡単なことではない場面が多いことは想像しやすいと思います。

そのようなことを前提にしつつも、私たち消化器内科に携わる医師は、なんとか身体的側面から、患者様の症状を和らげたいと努めています。

機能性ディスペプシアの治療

治療薬として、保険診療上、機能性ディスペプシアが適応病名となっているのが、アコチアミド(商品名:アコファイド)です。機能性ディスペプシアでは、胃の動き・働きが障害されていることが多く、アコチアミドは、胃の動き・働きを改善する薬剤として作用します。胃内視鏡検査にて、急性胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃癌などの器質的疾患のないことが確認された場合にのみ使用できることになっています。

また、機能性ディスペプシアの胃の動き・働きは、胃酸分泌が過剰になると起こりやすいとされており、H2ブロッカー(H2RA)、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)といった酸分泌抑制剤が、良く用いられます。(但し、保険適用としては、逆流性食道炎、胃十二指腸潰瘍等の疾患に限られます)

胃の動き・働きを改善する薬として、漢方薬も有効な場合があります。私は、六君子湯や茯苓飲合半夏厚朴湯をよく処方しています。胃もたれ症状の改善、食欲不振の改善に効果がみられる患者様が比較的多い印象をうけています。(但し、保険適用としては、胃炎等の疾患に限られます)

胃十二指腸潰瘍の薬物治療は、顕著な症状改善につながる場面が多いのですが、機能性ディスペプシアの薬物治療の場合は、背景にストレス要因がかかわっているためか、治療効果が限定的な場合も多くみられます。私は、前もって、治療による症状改善は、100%ということは難しく、7~8割がたの改善が得られたら良いのではと、少し気長に治療に向き合っていただけたらと、患者様にお話しています。そのほうが安心される患者様が多いように思います。

また、治療効果が十分でない場合には、器質的疾患が本当にないかどうか再評価をするように心掛けています。当院で実施できるのは、採血・尿検査、胃内視鏡検査、腹部超音波検査までですので、CTやMRI等の精密検査をお勧めして、総合病院・大学病院のご紹介をすることがあります。その結果、器質的疾患がみつかる場合もありますので、治療効果に満足ができない場合は、どうかお気軽に相談いただけると助かります。

患者様に寄り添う治療

最近の診療風景です。

医師
「○○さん、先日の胃カメラ、とくになんでもなかったよ、良かったね。」
患者様
「そうですか、じゃあ、胃が痛いのは気のせいなのかな・・・」
医師
「気のせいではありませんよ、〇〇さんが胃が痛いと感じているのは、まぎれもない事実なんだから。」
患者様
「では、やっぱり病気なんですか。」
医師
「検査をやっても胃十二指腸潰瘍などの病気はみつかないのに、胃が痛かったり、胃もたれがあったり、患者さんがつらい思いをしているのを、機能性ディスペプシアと呼んでいるんですよ。ストレス要因がかかわっていることが多いんだけど、心当たりは?」
患者様
「あります!」
医師
「ストレスで、胃の動きや働きに支障をきたして症状をきたしているわけなので、まずは、胃の動き・働きを改善するお薬で、治療をしましょう。100%の効果は出ないかもしれないけど、症状が良くなるように、少し気長に治療してみましょう。」
患者様
「お願いします!」

 「機能性ディスペプシア」。私たち消化器内科医が、患者様に寄り添って治療に携わってゆくことの重要性を教えてくれている疾患概念であると思えてなりません。

さくらんぼ通信 第 2 号

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